東アジア選手権を振り返る
東アジア選手権が終わりました。
残念ながら、日本はまたしてもこのタイトルを逃してしまいましたね。
1勝2分。得点3失点2。
これからW杯アジア予選を迎えるにあたって、少し寂しい数字だな、というのが率直な感想です。
もちろん怪我人も多かったですし、まだJリーグも開幕してませんから、選手達のコンディションも万全ではなかったでしょう。中国戦では酷いジャッジもありましたし。
なので、タイトルを取れなかった事は非常に残念だし若干情けないような気分になりますが、今回の結果だけを見て変に「ダメだ」と決め付けるような事はしたくありません。
岡田監督は今回、「テストをしつつ内容も結果も満足」という、ある意味非常に贅沢(欲張り?)な感覚で大会に臨んだように感じましたし、その結果として決して収穫はゼロではなかったと思います。
個人的に感じた収穫と課題を挙げてみます。
■新たな戦力の収穫
この3試合を通じ、最も輝いたのは安田でしょう。
左SBの控えとして、しかも追加召集という形での参加でしたが、攻撃面で大収穫でした。
また、日本代表に「仕掛ける意識」をもたらせてくれたと思います。
この「仕掛ける意識」というのは、今の(というか、ここ数年の)日本代表に欠けている物の1つだと感じています。
パスは繋げる。キープはある程度出来る。でもゴールが遠い。ゴールどころかシュートシーンが少ない。
日本代表の試合を観ていて同様に感じる人は多いでしょう。
戦い方のベースが「パスで繋いでいく中からチャンスを見つける」というスタンスなのは分かるのですが、仕掛けてくる選手がいないというのはDF的に余り怖くありません。
そこに変化をもたらす動きを見せたのが安田でした。
今回の活躍により、今後も継続して代表に呼ばれるのではないでしょうか。
オリンピック代表もありますし、ガンバなのでACLもある。
今年の安田は更に飛躍するチャンスかもしれませんね。
怪我には気を付けて欲しいです。はい。
あと、田代も評価を上げたうちの一人だと思います。
得点こそありませんでしたが、期待以上の1TOPでの仕事ぶりでしたね。
「フィジカルが強い」と言われる中国や韓国の選手に対しても、全く負けていませんでした。
そして足元の技術も決して悪くなく、ポスト役として代表の中でも地位を確立出来たのではないでしょうか。
点を決めていれば更に評価も高くなったでしょうが。。。
今大会に参加したFWでは一番手でしょう。
逆に播戸、矢野は評価を上げられませんでした。
そして山瀬。彼の場合は「今大会で」というよりか「岡田監督の下で」輝き始めた選手と言えるでしょう。
2008年、代表戦では5試合で4得点。
これだけ見ても、非常にシュート意識の高い選手である事が伺えます。
この選手も安田と同様、代表に不足していた「前への推進力」を持ち込んでくれたと思っています。
積極的にシュートを打つ事。そしてボールを持った時にまず前へ向かおうとする姿勢。
これらは最近の代表に足りなかったものでした。
山瀬は今後の代表には欠かせない選手になってきそうな気がします。
メディアなんかでは「岡田チルドレン」等という言葉で勝手に括られてますが、今の状態ならば岡田監督でなくても使いたくなるでしょう。
■テスト出来たっぽい事
曖昧な書き方をしたのには理由があります。
テストはしていたようだが、結果として良かったのか悪かったのか判断しかねる所も含むからです。
ざっと挙げてみましょう。
控えGKのテスト
加地の左SB
4-5-1での戦い方
橋本の新しい使い方
1.は3試合で3人、きれいに使い分けました。
個人的には川島を3試合通じて使って欲しかったりもしましたが、まあそれは単純に好みの問題です。
代表での楢崎を久しぶりに見ましたが、やはり川口と比較しても遜色ない選手ですね。
2.はまあ今回の批判の的の1つでしょう。
加地自身は何とかこなそうとしていましたけどね。
皮肉な事に、韓国戦では駒野、安田の怪我により「加地左SB」が普通の選択肢になってました。
(橋本という手もありましたが)
加地の左SBのせいで決定的なピンチ、というのは無かったような気がしますが、加地の左SBから決定的なチャンス、というのも無かったです。
なので、使える目処は立ったけどスタメンじゃないなぁ、という感じでしょうか。
3.はオシム監督の頃にもたまにやっていましたね。あの監督はシステムの数字なんてものに意味は無いと考えていた人でしたが。
で、今回の中国戦から使われた4-5-1。
結果的に「FWの背後から飛び出す山瀬」「1TOPの田代というオプション」「ボランチの位置での中村憲剛の良さ」「中盤を厚くする事による守備の安定」などという収穫をもたらしたのではないでしょうか。
ただ、今回怪我で参加しなかった選手や海外の選手が代表に加わった際にどうするのかは未知数ですね。
松井なんかはこのフォーメーションの2列目左にピッタリだと思うんですけどねえ。
4.は韓国戦だけですけど、橋本は器用なんだと言う事に気付かされました。
もっと守備的なイメージだったんですが、右のアウトサイドで積極的に攻撃に参加していたように見えました。
中央へのポジションチェンジもありましたし、悪くなかったですよね?
■そして課題
課題については皆さんそれぞれで色々と考えをお持ちでしょう。
ただ、ここでは「誰がダメだ」という事は書かないようにします。
チーム全体としての課題を考えてみようかな、と。
簡単に思いつくところとしては「得点力不足」ですかね。
これを掘り下げていくと、「そもそもシュート少なすぎる」「打っても枠に飛ばない」「パスの意識が強すぎる」
という所に繋がっていくかと思います。
まあ「得点力」に関してはもうずーっと言われてますから、永遠の課題と言っても過言ではないかと。
韓国戦での中村憲剛のように積極的にミドルを打って枠に飛べば、チームのムードも良くなるんですけどねえ。
選手達の意識の問題だと思ってます。
他の課題として、特に今大会で感じたのは「前半の出来が良くない」というのがあります。
ハーフタイムで何かしら指示されているのでしょう。後半になると随分と選手の動きが良くなったりしています。
相手の疲労が出てきたから、という見方もあります。
が、それを差し引いてもやはり前半の入り方が余り良くないように思えました。
北朝鮮戦では前半5分、韓国戦では前半15分で得点されています。
どちらの試合も何とか引き分けに持ち込みましたが、逆に「引き分けになってしまった勿体無い試合」とも言えるではないでしょうか。
言うまでもなく、サッカーは先制したチームの方が有利です。アジアの国相手だったから同点に出来ましたが、もっとレベルの高い相手であればそのまま1-0で逃げ切られてしまう事もあるでしょう。
90分の試合の中で、どうしても良くない時間というのは出来てしまうものですが、前半の相手の勢いのある時に「良くない時間」になるのは頂けません。
是非改善して欲しい所です。
もう1つ、課題と言うか不思議な点なんですが、
日本代表って速攻が下手なんですかね?
相手が攻撃中にインターセプト出来た!→さあ速攻だ!→得点!
というシーンが無い様に思えるのですが。
目指すところが「ポゼッションを高めるサッカー」だとしても、速攻は得点の大きなチャンスな訳で、これを逃す手は無いですよね。
速攻から点が取れるようになれば、もう少し楽になると感じるのですが、どうでしょう。
と、まあ長々と総括してみました。
岡田監督自身、今大会の結果については大いに不満の様子で、韓国戦の後のインタビューで怒っていたのが印象的でした。
こんな時期に罰ゲームのごとくフィジカルを削られまくった今大会でしたが、監督や選手達は間違いなくそれぞれの収穫と課題を持ったと思いますので、それらを是非W杯予選に生かして頂きたい所です。