ベストメンバー規定の不思議
少し前になりますが、
J1のヴィッセル神戸が6/27に行われたナビスコカップ予選の横浜Fマリノス戦で
ベストメンバー規定に抵触したとして、罰金1000万が課されました。
2009年のサンフレッチェ広島以来、3年ぶり2度目の罰則適用事例だそうな。
さて、これを機に再び「ベストメンバー規定って本当に必要なの?」
という議論が起こりつつあります。
私もこれを機に、ちょっと考えてみました。
ちなみに立ち位置としては「この規定はいらん」です。
■今回の事例
この時のヴィッセルは、スタメン中にこの規定を満たす選手が4人しかいなかった、との事。
で、この試合におけるヴィッセルを取り巻く状況を羅列すると
西野監督に交代してから6試合目の公式戦(リーグ戦は3試合)
この試合はナビスコカップGLの最終戦で、既にGL敗退が決まっていたヴィッセルにとっては消化試合
メンバーは「過去の公式戦5試合」ならば条件を満たす。でも規定では「過去のリーグ戦5試合」
てな感じ。
なおこの試合、3-2で勝利しております。
「ベストじゃないメンバー」に負けてしまったマリノスに対して
リーグ側は何らかの注意を与えないといけないんじゃないですか?w
って思ったり。
ヴィッセル側は今回の規定違反を認めたうえで、「規定の誤解釈」だったとしています。
(上記の3.を勘違いしていたとの事)
んで、罰金の上限が2000万で今回は1000万という事は
Jリーグ側としては「悪質ではない」と判断したのでしょう。
でもこれ、2009年にサンフレッチェが払った金額と同じなんですよね。
サンフレッチェはリーグ側に確認してOKもらったのに
後から「あ、ゴメン。やっぱり違反だったわ」で1000万だった訳で。
別に「ヴィッセルは確認してないから1000万は安い」と言いたい訳ではなく、
サンフレッチェの場合は明らかにリーグ側のミスで、
ヴィッセルの場合はクラブ側のミス。
これが同額ってのがちょっと理解しかねるという事です。
何か、雰囲気で金額決めてね?って感じ。
■そもそもの意義
ベストメンバー規定って、何で存在するのでしょう?
まず、この規定が生まれた経緯についてはWikipediaの記事を見る限り、
2000年のアビスパ福岡監督・ピッコリさんの発言と行動が原因だそうで。
で、この規定に対して挙がっている批判についてもそのWikiのページに書かれてますが、全く以って同意です。
この規定の存在意義を考えると
カップ戦の権威が薄れる
「控え中心=手を抜いている」というイメージが、カップ戦のスポンサー離れを招く
サッカーの試合はtotoの対象であり、故意に主力選手を出場させないという行為が八百長に繋がる
クラブチームはスタジアムに来場してくれた観客に、そのチームの最大の力を見せる必要がある
という所でしょうか。
どれもこれも、一切監督や選手、クラブチームの立場に立っていない気がします。
カップ戦の権威やスポンサーの問題については、
正直綺麗事というか、どう足掻いてもクラブチームにとっては
リーグ戦>カップ戦である訳で、
その上で「リーグ戦とは違うけど、栄誉あるタイトル」
って位置付けにせざるを得ないと思います。
そういう位置付けでスポンサーを募るしかないし、
サポーターやライト層のファンにもそういう認識をしてもらう必要があるのかと。
(ま、サポーターは百も承知でしょう)
自然と各クラブはベストなメンバーを組んでくるし、
何もグループリーグの消化試合でギャーギャー騒ぐ必要は無いんじゃないかなー、と思います。
八百長については確かに防ぎたいでしょう。
でも、この規定があったら防げるのかというと、
それ程の効果は無いんじゃないでしょうか。
そもそもtotoの対象は1試合ではなく、
八百長で何かの利益を得ようとするならば多くのクラブに働きかける必要があるでしょう。
しかも、主力を休ませてサブを出すように仕向けても
その選手が意外な活躍を見せてしまえば意味がなくなります。
となると、代わりに出場する選手も抱え込んで八百長する必要が出てきますし
相手チームも抱え込まなきゃいけなくなるし。。。
と、少なくとも私の頭では「ベストメンバー規定が無い」事で
上手い事八百長できません。胴元にはなれないようですw
八百長試合を防ぎたいのであれば、
ベストメンバーを組んでこなかったチームに対して内偵を行い、
問題なければ不問にすれば良いだけでしょう。
疑いがあった場合に初めて罰則の対象にあがる、と。
要するに、
「ベストメンバー規定」がある事によって何らかの問題が劇的に解消されているって事が無いんですよね。
■規定が抱える穴
一方で、この規定の穴というか
「この場合どーすんの?」
「何か矛盾してね?」
って思うところがあります。
今回の西野監督の例のように、シーズン中に監督が代わり方針も変わった場合でも、前監督のメンバーに縛られてしまう
例えば夏の移籍市場で主力がごっそり持っていかれた場合でも許されないのか
例えば主力が6人ほど怪我で離脱していて、たまたま同時期に復帰した。その選手達を同時にスタメンで使えないのか?
一方で「秋春制に移行すべき!なぜなら夏の試合は選手の疲労を蓄積するから」と謳っておきながら、この規定では特定の選手の連続出場を強制している
カップ戦を適用範囲にしながら、規定の条件は「リーグ戦の過去5試合」
素人がちょっと考えただけでもこれだけ疑問が出てきました。
頑張ればもっと出てきそうな気もします。
杓子定規にこの規定を実施しようとする側は
何にも疑問を感じないんでしょうか?
幸い、現Jリーグチェアマンの大東氏は個人的な意見としながらも
この規定について見直す必要性を感じていらっしゃるようです。
最初に書いたように、私としてはこんな誰も得をしていない無意味な縛りをする規定なんて
全く必要ないと考えます。
チームってのは何もスターティングメンバーだけの話ではなく、
その試合の登録選手全員を指すものです。
いやもっと言うと、そのクラブチームに選手登録している全員が「チーム」を構成しているのです。
そしてその選手達というのは、クラブチームが戦力として必要だと感じたから契約していて、
クラブチームは「強くある」為に選手を保持しているんです。
チームの監督は、その中から「最初に出る11人」を決める自由を持っているはず。
なので、「その時点における最強のチーム(ベストメンバー)をもって試合に臨まなければならない」というJリーグ規約は、
どのチームも満たしてるんですよね。広義的には。
選手の疲弊を考えるならば、秋春制への移行より先に
このベストメンバー規定の見直しをすべきじゃないでしょうか。