関塚監督を振り返る
オリンピックが終わり、日本サッカー的には
「色々あったけど、まぁ良かったんじゃないか」
的な雰囲気でシャンシャンとなりそうな感じ。
一方で、スポナビブログその他でネチネチと
「関塚監督は無策」
「永井がいたのに、ムキー!」
「運に恵まれただけ」
と、これまた断定的に批判されたりもしています。
どちらの意見にも頷ける部分もありますし、そうでない部分もあります。
なので、ここらで個人的に関塚監督について振り返ってみようかと思った次第です。
■結果から振り返る
最後に連敗はしたけれども、ベスト4です。
前評判は散々でした。私も決勝トーナメントに進出すればOKだと思ってました。
それが、グループリーグは負けなしの1位通過。
準決勝まで無失点という結果を残したのです。
守備に難がある、と言われ続けたこのチームが無失点。
この結果だけで考えれば、上出来も上出来だし素晴らしいと言わざるを得ません。
Jリーグ発足(1993年)以降、最高の成績です。
あの「マイアミの奇跡」を起こしたアトランタもグループリーグ敗退。
「最強世代」と言われたシドニーでも、PK負けですがベスト8止まりでした。
ですので、
前評判がよろしくなく、また、守備に難アリと言われていたチームを
「前線からのプレス+リトリートからのカウンター(要するに戦術永井)」を軸に
ベスト4まで連れて行った関塚監督は、賞賛に値すると言って良いのではないでしょうか。
■内容から考える
で、結果は残したけどその試合内容はどうなのさ、という所です。
前述しましたが、採用した戦術は
前線からのプレスでボールを奪ってのカウンターと
一発でボールを奪いに行かず、自陣に引いて守備ブロックを作り相手を囲んでボールを奪う
という2つを併せたモノでした。
基本、守備ですね。
これが、少なくとも3試合でバッチリはまりました。
スペイン戦、モロッコ戦、エジプト戦です。
スペイン戦では相手も面食らった感じがありましたし、
日本もここにピークを持ってきていたので調子も万全で、
この試合が日本のベストだったんじゃないでしょうか。
モロッコ戦、エジプト戦については「カウンター」が完全に決まりました。
なので、この戦術のみを考えれば、関塚監督の手腕は素晴らしかったと言えるでしょう。
■じゃあ関塚監督パーフェクト?
パーフェクトじゃないですね。さすがに。
素晴らしかった面は素晴らしかったのです
が、
残念な点がいくつかありました。
全ての戦術において、永井が必要不可欠
ボールを持たされた場合の引き出しが皆無
選手交代の有効性が薄い
まず1.ですが、
五輪で採った戦術が永井のそのスーパーな速さと巧みなチェイスがあってこそのものだった訳です。
永井が負傷したエジプト戦以降、日本の攻撃が上手くいかなくなったのは
相手の対策もあったし日本の選手の疲労などもあったでしょうが、
やはり永井自身の調子が落ちていた事も無関係ではないかと。
そして、永井の代わりもいなかった、と。
これは3.に繋がります。
んで2.について。
1.とも絡みますが、相手が前プレ&カウンター対策をしてきて永井に出すスペースが無い、
もしくは相手のプレスが厳しくて、ディフェンスからのビルドアップをせざるを得ない場合に本当に無策でした。
監督にも、選手にも。
元々アジア予選でもポゼッション風の戦い方をしながら
得点パターンは大迫のポストプレイを中心とした、
オーソドックスというか当たり障りないというか、まあ普通のモノでした。
それでも勝ててしまうのだから強いとも言えるし、アジアのレベルが残念とも言えますが。
で、いざ本番でその戦い方をしようと思っても結局出来なかったんですね。
プレッシャーが違う。ポストプレイも上手くいかない。
そうなってしまうと、本当にどうしようという感じで個人個人がその場で思い付いた崩し方をし始めます。
当然、意思の統一は出来てないのでパスミスが多くなり。。。
最終的には「攻撃してるのかどうかも良くわからない」ような状況になりました。
監督が何らかの対策を施すべき部分ですが、関塚監督は何も出来ませんでした。
もしくは、何かしらの監督の指示があったにも関わらず、選手が対応出来ていなかったか、です。
選手が対応出来ないというのは、つまり準備不足だと思いますので
やはり「カウンター対策がなされた場合の対抗策」が無かった監督の落ち度なのでしょう。
そして3.
やはり1.と2.に密接に関係します。
永井が負傷で上手く動けない。相手がカウンター対策をしてきた。相手にリードを奪われてしまった。
さあ、選手交代でこの状況を打開しよう!という時に
杉本や宇佐美が登場する訳です。
それぞれに特徴を持つ選手です。高さであったり、個人技であったり、シュート技術であったり。
ですが、選手交代の際に具体的な指示が無かったとの話がありました。
(どこぞの記事かコラムだったので、信憑性はわかりませんが)
で、実際に杉本はその高さを生かされる訳でもなくサイドに流れ、
宇佐美にボールを預ける選手がいない為、結局自分で低い位置まで貰いに行っていました。
彼らの使い方が違っていれば勝てたか…というとちょっと難しかったかもしれません。
ただ、選手交代というのは試合中に監督が出せる最も強いメッセージだと思うのです。
それを、ただ単に「選手の変更」に終わらせてしまった感があった為、
とてもじゃないですが選手交代を有効に使えていたとは思えないのです。
■敗戦は監督だけの責任か
凄く正直な感想を書くと、このチームでは単純に実力がここまでだったとしか思えないです。
監督の大きなミスがあったから負けたのか、というとそうではないでしょう。
確かにリードされた後に無策ではありましたが、
この大会までのプロセス(選手選考~強化試合、日程、戦術変更を含めて)を考えると、
関塚監督を始めとするスタッフ及び選手は、
与えられたカードで最大限の結果を出したと思いますし、
これ以上は出なかったんじゃないかと。
また、選手のメンタルも予想以上に脆かった気がします。
無失点で準決勝まで進み、失点をした後にバタバタと崩れてしまいました。
メキシコ戦、同点だったにも関わらず、何か急いでしまった。
韓国戦、相手のラフプレーにお付き合いしてしまった。
こうしたメンタル面も、敗戦の一因だと思います。
これを監督だけの責任にするのは酷でしょうね。
(監督に責任が無いとは言いませんが)
ダラダラと書いてきましたが、結論としては
関塚監督はその手腕を十分に発揮して望外の成績を収めた事から、
非常に良くやってくれた監督であったと考えます。
欠点はあったにせよ、です。
関塚監督が出来なかった事は、次のアンダー世代の監督への宿題ですね。
日本代表というチームはどの世代でも、
アジアでは強くて世界では強くない、というジレンマを抱えています。
ポゼッションもカウンターも、両方出来ないとダメなのです。
今回はカウンターを武器に出来た。では次はカウンターもポゼッションも出来るチームを作る。
そんな感じで今回の五輪の結果を無駄にせず、
得た教訓は生かしていって欲しいと思います。