おっさんサッカー独り言

サッカー日本代表とかジェフ千葉についてブツブツ書きます。

名将でもなく、迷将でもなく

日本代表にとっての南アW杯も終わり、岡田監督も当初の予定通りここで退任となりそうです。

さて、このW杯での選手達の戦いには感動しましたが、ここは一つ落ち着いて

「岡田監督の残したモノ」

を振り返ってみたいと思います。

…とその前に、

今回は「日本サッカー協会」と岡田監督を切り離して考えますのでご了承下さい。

混ぜるとね、何だかわからなくなるから。

■良かったと思う点

何はともあれ「結果」を残した事。

突貫工事だったかもしれないが、日本でも世界とそれなりに戦える“堅守”を持っているってのを気付かせてくれた事。

我々の想像以上に一体感を持ったチームを作り、その一体感は大きな武器になると教えてくれた事。

川島の抜擢と中澤→長谷部へのキャプテンの変更と戦術の変更を一気にやるというギャンブルに勝った事。

実は長友をA代表に抜擢した。本田1トップも慧眼。

個人的に、岡田監督は「周囲にどんなに叩かれようが、自らの考えを貫く人」

だと思っています。

そんな人だから、選手達も付いて行ったんじゃないかと。

「ベスト4」「世界を驚かせる」

という、下手すりゃただの妄言になりそうな目標でも

ちょっとやってみようよと、選手達に思わせてみせた。

モチベーターとしては実に優秀な人なんじゃないですかね。岡ちゃん。

パラグアイ戦後の選手達の涙が、本気で上を目指していたんだって事に気付かせてくれました。

負けて満足そうな選手はいなかった。

そして帰国した時の会見を見て「本当に良いチームを作ったんだな」と思いました。

まあ、私自身がこんな風に岡田監督を「悪くない監督」と感じているから、簡単に叩けないんですが。

■悪かったと感じる点

最後の最後まで「得点」までのプロセスを選手に与えられなかった事。

パスサッカーの為の人選で、堅守速攻の戦術を選んだ事。

パスサッカーを引っ張りすぎた…かも。

やはり攻撃面での「もう一工夫」の無さは、岡田監督の限界なんだろうなぁと思います。

“速いクロス”

“ゴール前の迫力”

っていう言葉で攻撃面にメスを入れようとしてましたけど、

結局モノにならなかった感じ。

あとはやっぱり人選と戦術の乖離でしょうか。

チームを早めにまとめる為にあのタイミングで23人に決めたのがアダになってしまった形です。

誰が入れば良かった、とかそういうレベルの話ではなく、

今回の日本の戦術で重要だった、ボールを運べるサイドハーフ

結局松井と大久保、あと玉田ぐらいしかいなかった。(矢野もかな?)

そしてそれまでレギュラーだった俊輔と内田に関しては、

今回の堅守速攻の戦術の中で活かせる場が思い付きません。

やっぱり、ちょっと勿体無かった。

んで、それに関連して

「引っ張りすぎたパスサッカー」ってのが挙がってくるんですけど、

これはなかなか微妙な問題です。

というのも、

2年半もの間サッカー界の常識から外れた“パスサッカー(ガムシャラ前プレス付き)”を標榜して、

ギリギリまでそれを貫き通そうとしたからこそ、土壇場で「堅守速攻」が生まれたと感じているから。

これは想像に過ぎませんけど、

岡田監督の中で「守ろうとすればそのやり方はすぐにチームに反映させられる」

っていう手応えがあったんじゃないかと思うんですよ。

得意ですからね。守りの戦術。

だから、W杯に挑むプロセスとしては決して誉められないと思いますけど、

「堅守速攻」を生んだ土壌になったと思えば、ある意味必要な回り道だったのかも知れません。

■意見のわかれる所

やっているサッカーに進歩が無い?

2年半が無駄?

勝っても内容が悪い?

この辺は、個人的にジャッジが難しいと感じています。

2年半が無駄だったかどうか。つまりはサッカーに進歩が無かったのか。

岡田監督は2年半の中で

「パスを繋いでポゼッションを高める。前線から守備をしてボールを奪い、ゴールに結び付ける」

というサッカーを目指して戦ってきました。多分。

少なくとも私の目には、そういうサッカーを目指してるんだな、と映っていました。

で、ご存じの通りガラリと方向転換。

そもそもこの事が批判を生んでいると思います。

私も、ギリギリの方向転換については諸手を挙げて「全然オッケー」と思ってません。

それが例え苦しみの末の決断だとしても。

それでも、2年半の間に培ってきた(であろう)サッカーの片鱗は

デンマーク戦パラグアイ戦に見えてませんでしたか?

相手が前掛かりになったデンマーク戦では、ダイレクトで繋ぐシーンも見られました。

パラグアイ戦の後半、中村憲剛が見せた前線でのプレスと速い攻撃は、

まさしく以前やっていたサッカーでした。

例えば12年前のフランスW杯も、まずは守ってから、という戦術でした。

が、

アレは今から考えれば

「守る事で精一杯で、他に何にも出来なかった」

という感じ。

今回は

「身体を張って守りながら、攻めるチャンスを窺おう」

という意思が見られた…と思うのです。

なので、

2年半が丸っきり無駄だったかと言うとそうでもないと思います。

まあ、早い時期から一貫して「しっかり守って、素早く攻める」

って事をちゃんとやっていればもっと良かっただろうなぁ、とも思います。

そして、進歩の有無に関しても、

進歩自体はしていると思うんですけど、

世界のサッカーの進展にきちんと付いて行っているのか、少しずつでも距離を縮められているのか

と言われると、「わからない」となってしまうのです。

そもそも、何を持って『進歩』なのかもだんだんわからなくなってきますし。

「勝っても内容が」という事に関しては

確かにカメルーン戦やパラグアイ戦は良い内容だったと思いません。

ですが、

やっぱり今の日本にとって、W杯は負けたら意味が無いんですよ。

勝つ事で色んな事が見えてくる。

「内容が良ければ3連敗でも良い!」

という方もいらっしゃるかもしれませんけど、

3連敗したらそれは「勝てる内容じゃなかった」って事になりますし、

そもそも今の日本はまだ「内容」を論じれる程成熟してないかと。

まず、勝つ。

勝って、その中で「悪い内容での勝ち方」「良い内容での勝ち方」を体感していって

ようやく内容云々を語れるようになるんじゃないかなぁ。

だから、ここで挙げた3つについては

見方によって色々変わる代物だと考えてます。

さあ、日本代表はこれから新しいスタートを切らねばなりません。

しかし、これを0からのスタートにしちゃいけないですよね。

岡田監督の元で世界に通用した武器を磨き、

岡田監督には出来なかった事に取り組む事が

次の代表に求められているのだと思います。

私は岡田さんが名将とは思いません。

ですが、

彼は少なくとも批判されるのは覚悟のうえで自らの意志を貫ける

(そして時には理想を捨てる事も厭わない)、

しっかりとした「良き監督」だったんじゃないかと。

岡田さん、ゆっくり休んだ後はまたWOWOWで面白い解説して下さい。