岡田監督で行ってみよう
思い返せば約1年半前。最初のエントリーが
岡田じゃダメか?
みたいなやつでした。
(オシム氏が倒れて後任に岡田監督が決まる直前)
いきなりコメントがごっそり集まって狂喜乱舞したのも今では良い思い出ですw
で、アジア最終予選も終わって一つの区切りが付きましたので、
その記念(?)として自分なりに「岡田監督」を振り返ってみます。
W杯終わってからにしろっていう気もしますが、現段階での思いって事で一つ。
ちょっと長いですけど。
■大雑把に言うと
ウズベキスタン戦からカタール戦を経て、オーストラリア戦に至る経過で
一気にその評価を下げてしまった感のある岡田監督。
キリンカップで下手に良さげな試合をしてしまったのが更なるギャップを生んだ気もします。
ですが、物凄く簡単に書いてしまうと
私はそれでも岡田監督を割と評価してます。
何故か。
正直、期待してませんでした。
オシム前監督に対する期待が高過ぎたのと、「既に知ってる」監督だった事。
そりゃ、期待値も減ります。
んで蓋を開けてみても、最初は前監督の雰囲気を残しながら自分の色も少しずつ出しながら…
と、中間管理職みたいな苦労をしながらやってて、
結果もパッとしないからやたら批判され、
「それじゃ俺流でやってやる!」と息巻いたけど結局まあ普通で。
それでも、気が付いたらW杯最終予選を勝ち抜いて(最後にケチが付きましたが)、見事に出場の切符を手にしたんです。
相手が弱かった。アジア枠が多い。そんな声もたくさん聞かれます。
でも、多くの人が「義務」「当然」みたいに思ってるW杯出場ですけど、そんなに簡単なもんじゃないと思うのです。
そりゃアジアの中での実力を考えれば「是非とも出て頂きたい」という気持ちにはなるけれども、
負けてしまう可能性は当然ある訳で。
今後100年の間にW杯は25回あるけれども、その全てに出れるとは限らないですから。
(日本サッカーの発展の為には、是非とも全てに出て欲しいけれど)
そんな中でちょっと引き分けたり、1点しか取れなかったりしただけで
「これじゃ惨敗だろ」「岡田じゃダメだ」
っていう論調に持って行くのはいささか極端かな、と思うんですよ。
少なくとも予選ではまず、W杯に出場する権利を得る事が必要だった訳で。
そういう意味で、日本代表を「W杯」という場所に連れて行ってくれた岡田監督及び選手達にはまず感謝です。
つまり、
(個人的に)期待値の低かった岡田監督が、終わってみたらそこそこの成績でW杯出場までチームを持って行った事。
これが評価している大きな点なのです。
■やってるサッカーの内容はどうなのさ
岡田監督を評価していない方々は、概ね
「今のサッカーじゃアジアには勝っても世界じゃ無理」
「戦術が中村俊輔+遠藤」
「ちっこいFWばっかりで点が取れる気配が無い」
「結局守備ばっかりで、攻撃のバリエーションが無い」
という感じ方なんでしょうかね。他にもまあ色々あるかと思いますけど。
ただ、私は、
岡田監督のコンセプトが“日本の一つの可能性”であると思ってます。
フィジカル・テクニックで欧州や南米に到底敵わない。
日本が世界と互角に戦おうとするならば、何かしらの武器が必要。
サッカーは点を取られなければ最低でも引き分けられる。
ならば、守備から入ろうよ、と。
そしてフィジカルやテクニックが多少劣っていても、相手を出し抜けるような戦術を採りましょうよ、と。
その為に
高い位置(FW)からの執拗なプレス
攻守の切り替えの速さ
パスを繋ぐ(=フィジカルコンタクトを極力避ける)事で、俊敏性の勝負に持って行く
ってコンセプトが生まれたんじゃないかと。
(これが通用するかしないかはさておいて)
なので、私は「岡田監督の狙いは悪くない」と思ってます。
そしてこのやり方がW杯で通用しなくても、それはもう結果として受け止めれば良いんじゃないかな、とも。
悪い言い方をすれば、「今回のW杯で試してみる」って事です。
もしかしたら、どこか通用する部分も見えてくるかもしれないし。
そしたらそこを今後に活かせばいいんじゃないでしょうか。
■でも全面的な信頼は…
やっぱり疑問点も出てきますよね。
一番大きいのが、点の取り方。
今のままではやっぱりなかなか点が取れないような気がします。
個人的にはもっとミドルを積極的に狙って欲しいし、
もっと速攻を上手くして欲しい。
相変わらずサイドからのクロスは「ただ上げるだけ」になってる事も多いので「低く速く」を狙って欲しい。
ここは監督と選手が共に意識していかないといつまで経っても良くならないと思うのですが、
あまり進歩が見られないような気もしています。
それと選手選考に関しても、ちょっと柔軟性がないかな、と。
当然、コンセプトに合うか合わないかって部分もあるのかもしれませんが…。
でも、SBの選手起用も固定的過ぎるし、
攻撃的な選手も今のままじゃ「速くて守れる選手」しか選べない。
CBは控えが薄いし。
そしてこれは監督だけの話じゃなくなっちゃうんですけど、
「試合中の修正力」
これは大きな課題でしょう。
中盤でパスを繋ごうと思ってみたものの、相手のプレスが超絶に厳しくて繋げない。
さてどうしたもんか。
DFからのロングフィードで狙うのか。はたまたカウンター狙いで相手にボールを持たせるのか。
…というシーンがあった場合、監督の指示や選手交代によって
流れを変えつつ修正しなきゃいけない。
しかし、今まで選手交代がズバリ的中!という試合は無かったような気がします。
ま、監督がいかに修正方法を伝えていても、選手が対応出来てなきゃ意味は無いんですが。
こういった足りない部分があると感じるので、
やっぱり評価は割と、に留まっちゃうんです。
そして「足りない部分」は決して小さくないので、「監督交代」の声が出るのもわからんでもありません。
■例の目標とか
例の「ベスト4」発言や「世界を驚かせる」発言について。
まあ独り歩きしている感も否めませんが、結構真正面から受け取ってる人とかもいて、
そこそこ影響力のあった言葉なんだなあ、と感心しています。
個人的には悪い目標だとは思ってません。かと言ってコダワリを持つつもりも無いです。
ただ、W杯出場やグループリーグ突破だけを目標にするよりも、
選手達やサポーターがより高い所を見据える事が出来る。そういう意味で良い目標なんじゃないかと。
「こんな試合してちゃベスト4なんてチャンチャラおかしい」
「これじゃ世界は驚かねー」
的なコメントをよく見ますけど、これもある意味正解と言うか成功?なんじゃないかと。
つまり、岡田監督の発言が観ている人達に「ベスト4」を意識させている訳で、
厳しい目線で観るようになったのは一つの効果じゃないかと感じています。
ただ
「こんなんでベスト4とか言うな」とか
「二度と『ベスト4を目指す』等という恥ずかしい事を言わないで欲しい」
ていう意見は、ちょっと過剰反応じゃないですかね。
もうちょっと柔軟に、
“この試合の中で、このポイントを無くしていけばベスト4に近付くんじゃないか?”とか
“この試合のあのシーンを増やす事で、より上を目指せるんじゃ?”とか、
そういう風なスタンスで見れないのかなー、と思います。
現時点の代表の力でベスト4無理とか世界が驚かないとか、それを言っても無意味じゃないかなぁ。
まあアレです。
いつもいつも批判的に見られて大変な職業ですよね。代表監督って。
■まとめ
そんな訳で、賛否両論ありますでしょうけど
私は「岡田監督でも悪くなかったんじゃないか」と捉えております。
そして、やるんなら今のコンセプトで是非突き進んで頂きたいです。
新しい可能性を持ったFWの選出や全体的な控えの層の底上げなどは
もっともっと積極的にやって欲しいですが、
全体的な構造をゴッソリ変える必要はないんじゃないかと思ってます。
これで日本代表が南アフリカW杯のグループリーグで3連敗しても、
それは現実として受け止めますし、そこからまた強くなれればいいんじゃないかと考えています。
ダメならまた4年掛けて、今までの土台に少しずつ上乗せすればいいんじゃないかと。
またW杯で勝つ為に進歩すれば良いだけの話で。
南アフリカで負けても全てが終わるわけじゃないですから。
でもまあ、日本サッカー協会は今後、もっと深く考えて監督人事をしてもらいたいですね。
しっかりとしたビジョンを持って、どういう方向性で進むのかを示すと共に、
新たな監督を連れてくる際はその理由も説明してほしいです。
その上で、是非日本サッカーを強くしてくれるような監督を連れてきて下さい。
更には日本人指導者をどんどん海外に出せるような環境作りをして、
将来的に評価の高い日本人監督で日本代表が良い所まで行けるようにして下さいな。